[番外] 白日夢

みだれ坂の急な坂を上り皇女和宮様のご下向時の休憩用に漆塗りの御殿を建てたことから姫御殿と呼ばれた祝峠を過ぎると下り坂になる。十三峠といわれる大湫宿から大井宿にかけての長く険しい山道も、最後の西行坂の下りを残すだけとなった。
中山道から分かれ土岐や多治見を経て名古屋、さらには伊勢へと向かう下街道との追分を過ぎ、槙ヶ根立場に差し掛かると松本屋だの東国屋だの水戸屋といった茶屋跡の道標がいくつも並び往時の賑わいが伝わってくるようだ。

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幾つかある茶店跡の道標の中で茶屋水戸屋跡の道標が目についた

立場から1kmほど東に下った所に槙ヶ根一里塚があり、現在は西行の森という公園になっていて、その駐車場の一角に東屋がある。ちょうどこの辺りは街道の両側の立木がなくなり稜線を歩くような形で、右手に恵那山左手に笠置山や遠く御嶽山などの眺望が開けていて気持ちが良い。
30℃を超す夏の陽射しの中、先ほど買ったばかりのペットボトルの飲料水はもう空に近い状態。それでも東屋のひさしの中にいれば直射日光は当たらず通り抜けて行く風が涼しく気持ちが良い。あまりの気持ちよさにベンチに腰をおろし靴なんぞは脱ぎ捨て目をつぶっていると、ついコックリコックリと。。。

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東屋のベンチに座りつい居眠りを。。。

「もし、旅のお方。お茶でも飲んで行かれませぬか?」
目の前に現れたのは美しい茶屋の若女将。差し出された熱いお茶の甘露なこと。
「ついでに腰の水筒をお貸しくだされ。裏の脇水を汲んでまいりましょう」

フッと目を覚ますと、目の前のテーブルに置いた先ほどは空に近い状態だったペットボトルには透き通った水が満タンに。。。
何か狐にでも騙されているのではないかと目を擦ってみるが、確かにペットボトルには水が満ちている。蓋をひねり口を付けてみると中には冷たい水が入っていた。
不思議なこともあるものと、荷物を背負い大井宿に向けて西行坂を降りて行った。そこから2km足らずで十三峠も終わり、中央高速のガードをくぐりJR中央線の踏切を渡ると国道19号線に出た。
国道19号を大井宿(現在の恵那駅前)に向けて歩いて行くと左手に珈琲の看板が目に入った。店の名前を見てびっくり、「水戸屋」とあるではないか。中に入ると先ほど夢に出てきた美人の女将さんがにっこりと。。。

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cafe 中山道「水戸屋」

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アイスオーレを注文した